人類は常に温もりを愛してきました。
それにはちゃんとした理由があります。温暖な環境下では、体温を維持するための食物が少なくて済むためです。また、暖かい環境にいるのは大抵心地が良いですよね。それでは、私たちの身体がサウナ中に何を経験し、サウナ後の気分にどのような影響を与えるのかについて見てみましょう。
人類は心地良さのため常に温もりを求めてきました
北国の人々は、寒くて陰鬱な冬から逃れるため南へ旅をするか、あるいはサウナを温めます。いずれにせも、私たちは温もりを感じて心地よくなりたいのです。しかしサウナで体感する熱は非常に高いものです。私たち人間を含むすべての動物は、比較的狭い温度範囲で進化を遂げてきました。サウナの温度(70~100°C)は、当然のことながら自然界で経験する温度よりも高く、私たちの身体はそれほどの熱に長時間耐えることはできません。サウナに入っている間、熱から身を守るため人の体にはさまざまな変化が起こります。
サウナは身体に闘争・逃走反応を引き起こします
野生のトラに直面したときの瞬間を想像してみてください。あなたの脈拍は上がり、手のひらに汗をかき始めます。これは、危険と戦うかあるいは逃げる準備をしている時の身体の反応です。おかしな比較と思うかもしれませんが、サウナも同様の影響を私たちの身体に影響を与えるのです。スチームルームの高温を危険であると察知した私たちの身体は、自動的にそれに対処する準備をします。闘争・逃走反応が始まります。もちろん、私たちはサウナに無理やり行かされているわけではないので、野生のトラと対峙するのとまったく同じ状況ではありません。しかし私たちの身体は、ほぼ同じように反応するのです。これらの変化は、サウナ中とサウナ後の健康と幸せに影響を与えます。
サウナでは心臓がアスリート並に鼓動します
私たちはサウナの中で同じ場所にじっと座っているだけですが、心臓は身体を動かしている時と同じように反応します。これは暑い環境により血管が拡張し、血圧を正常に保つためには心臓が懸命に働く必要があるからです。まるでスポーツをしている時のように、心拍数は毎分120拍、場合によっては150拍にまで達します。心拍数は通常リラックスした状態では毎分60~80拍に収まります。
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皮膚温度は41°C (105.8°F) にも達します
発汗には時間がかかります。スチームルームに入った瞬間に汗をかき始めるわけではありません。なぜでしょうか?そうですね、たとえあなたの皮膚温度がすぐに上昇し始めて最終的に41°C(105.8°F)まで達したとしても、私たちの身体は、深部体温がおよそ37°C(98.6°F)に達したときにのみ身体を冷やす必要を感じます。その状態になるまで、かなり長い間スチームルームに座っていなければならないかもしれません。しかし体の70%はすぐに汗でぐっしょりになります。 深部体温は1分あたり1°C上昇し、最高39~40°C(104°F)にまで達します。 この深部体温の急激な上昇により、1時間あたり1.5リットルの汗をかくことがあります。
サウナでの認知能力と運動能力
夜遅くにスチームルームに入るときの私たちは、慌ただしかった1日の疲れを感じている状況です。サウナはこの疲労感をさらに増やし、認知能力や運動能力を圧迫します。私たちの脳には、暑さに対処すると同時に複雑な精神的タスクをこなせるほどのキャパシティはありません。脳は高温の影響から身を守ることにすべてのエネルギーを集中するように、必然的にプログラムされています。ぜひご自身で試してみてください。今度サウナに入るとき、自分の名前を左右反転させて書いてみてください。あるいは一般相対性理論について友達に説明してみてください。あなたが物理学の教師かレオナルド・ダ・ヴィンチ(左右反転した文字を書くのが好きな人物)でないなら、これらの作業は非常に難しいはずです。
サウナに入るとなぜ食欲が減るのでしょうか?
暑いときや熱があるとき、あまり食欲がないなと思ったことはありませんか。サウナでも同じことが起こります。それは、体内のホルモンの変化が原因です。外気温が30°C(86°F)に達すると、食欲を調節するホルモンが適切に機能しなくなります。熱の高い状況下では血中のレプチン濃度が上昇し、あまり食べていなくても空腹を感じづらくなるのです。
サウナは体の回復に効果的
もしあなたが手足が冷えやすいタイプの方なら、血液循環が良くないことがその原因であると恐らくご存知かと思います。サウナに入ると、熱により血管が拡張します。拡張した静脈は血液を体の中心部から腕や脚へと流れやすくします。サウナの熱は、手足への血液循環を改善します。また、赤血球の助けでより多くの酸素が手足には運ばれていきます。酸素は筋肉細胞が必要とするエネルギーを生成し、身体を動かすために不可欠な要素です。血液循環が良好になると、日中に筋肉に蓄積された代謝残留物や二酸化炭素が筋肉から除去されていきます。スチームルーム内に呼吸に十分な量の酸素を含んだ空気がある場合にのみ、サウナは体の回復に効果的となります。
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サウナは睡眠を改善します
就寝前にサウナや温かいお風呂に入ると眠りに入る時間がいつもより約 9 分早くなり、より深く眠ることができます。これは次のように説明されています。スチームルームの猛烈な熱の中、血液は体を冷やすのを助けるため皮膚や手足に流れていきます。しかしサウナから出ると、体はすぐに冷えてしまいます。そしてこの体温の低下が、脳に就寝する時間が来たことを知らせる合図になるのです。
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サウナ vs ウイルス
ウイルスの多くは高温への耐性がありません。サウナは人に害を及ぼすウイルスの多くを死滅させるのに十分な熱さがあるため、サウナ好きな方にとっては朗報です。吸い込む空気が、上気道に留まっているウイルスを死滅させます。さらにストーブから立ち上る蒸気により相対湿度が上昇し、それにより気道の粘液が修復されます。結果として、サウナ後の私たちの身体はウイルスを撃退するための準備がよりできているのです。
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結論
私たちの身体は、サウナ中とサウナ後に一連の変化を経験します。これらの一連の変化は全て、高温のサウナが私たちの生命と健康を脅かすものだと解釈している交感神経系によって媒介されるものです。闘争・逃走反応が引き起こされます。体を過剰な熱から守るために、汗をかき始め、血管が拡張し、心臓はより速く血液を送り出さなくてはいけなくなります。脳は生存の維持に全力になるため、サウナの中で同時に思考力を正しく働かせることはできません。ただし、サウナから出た後にリラックスしてぐっすり眠れるのは確実です。
情報源:Hõbepappel, Urmas; Hõbepappel, Liisa; Nellis, Silja; Nellis, Siim. Suur sauna raamat.タルトゥ, (原稿)